Lawrence Berkeley National Laboratory Windows and Envelope Materials Group
Quanex
Architectural Testing, Inc.
発表の構成メンバーを概括して、建築意匠の方々が集まる中、唯一の技術屋?の発表だったかと思います。学生の皆さんに伝えたかったこと、大きなことを言うと「自分の知らない世界がたくさんあるということ」、小さな部分だとアメリカにおける最新の板ガラスの開発状況を通して「建材の今後の可能性」について知ってもらえればと考えて発表しました。
発表では、自己紹介、アメリカの板ガラス開発の最新状況、そしてアメリカと日本の窓の断熱性能に関する基準の違いを紹介しつつ、ガラスの可能性を話しました。写真で示すようにアメリカは、カリフォルニア大学バークレー校に隣接するローレンスバークレー研究所を中心に高性能な窓をじゃんじゃん開発しています。調査の時に、私はすごいと感じていましたが、みなさんに伝えたかったことは、このことをすごいと思ってほしかったわけでなく、自分たちの知らないところで建築の可能性を広げるような想像を超える建材の開発が、世界各地で行われているということを知ってほしいと思い発表しました。現在、建築を設計するにあたり、コンクリ—ト、石、ガラス、木材、様々なマテリアルが存在しています。これらマテリアルは、最先端のテクノロジーで色々な性能が付与され、面白いマテリアルが開発されています。
AFTER HOURSに参加していたみなさんの多くは、設計が好きな人だと思います。今回は、ガラスを紹介しましたが、様々なマテリアルを楽しんで設計に、是非、チャレンジしてください。そして、こんなマテリアルがあればいいのにと思ったら、未来の建材の研究・開発のヒントとして、技術者に積極的に発信してください。きっと、その建材を実現させようと努力してくれるはずです。最後に、建築分野をより発展させていくためには、建築家と技術者が、より協働できる風土が根付くようになればよいのかと考えている今日この頃です。(磯部)
窓の熱性能試験 (熱貫流率)
ソーラーカロリーメーター (日射取得率) Architectural Testing, Inc.
バズーカ試験 (耐衝撃) ATI
National Fenestration Rating Council (NFRC) とEnvironmental Protecting Agency (EPA)
日米の窓に係る性能の違いと省エネルギー政策についての意見交換会
「環境と建材〜各国の最新の試み」を聞いて 高佳音
建材と性能に関する話は、当然建築を実現させるにおいて重要な要素である反面、カタログ的にドライな分野であるように捉えがちである。そもそも製品カタログから選択した材料やパーツで建物が完成しうるプロセスは、意匠的な視点(独創性、総合的な構想、ディテールのこだわり、等々)からすると、危機的状況であり、心外とすら言える状況かも知れない。しかし、建築行政に携わってこられた元役人であり現研究者の磯部さんは、設計者こそが技術開発にも積極的に関わるべきだと言う。建築廃材のリサイクル研究に始まり、愛知県庁建設部に勤め、再資源化システム構築の論文を執筆し、高性能窓の開発研究へと至った磯部さんの経緯と射程も興味深い。レクチャーで示された日本やアメリカの窓の断熱基準の大きな違い、開発の調査データ等を通して、建材というものが、ナノの技術から製造フロー、そしてエネルギー消費へと、ミクロからマクロまで影響を及ぼす大きな存在であるということがより明確になったのではないだろうか。環境的に優れている、イコール、デザイン的にはB級という図式を見直すと同時に、技術面において今の日本は発展途上国であるが、参考とすべき国になってほしいという磯部さんのメッセージを真摯に受け止めたい。
磯部 孝行 Takayuki ISOBE
熊谷研補手
1984 愛知県生まれ
2008 東京理科大学理工学部建築学科卒
2010 東京大学大学院新領域創成科学研究科社会文化環境学専攻 修士課程修了
2010 同専攻 博士課程進学 愛知県庁 入庁
2013 愛知県庁 退庁
2015 東京理科大学工学部第一部建築学科 熊谷研究室補手
(写真右から4番目)